古賀医療研究所
 Koga Institute for Medical Research


▼ 呼吸耐力予備指数 BITI(Breathing Intolerance Index) 及び 呼吸耐力予備指数測定装置 BTA
▼ BITI にみる患者の代表的症例
戻る

呼吸耐力予備指数 BITI(Breathing Intolerance Index) 及び 呼吸耐力予備指数測定装置 BTA

 筋収縮は永久に持続できず疲労を生じるものであり、疲労が進めば収縮不能となります。筋肉細胞のエネルギー代謝を元の状態に戻し、収縮力を回復するためには安静が必要です。横隔膜は呼吸筋の一つであり、周期的に収縮と弛緩を繰り返しています。この骨格筋の周期的収縮は、全呼吸サイクル時間 Ttot に対する吸気時間 Ti の割合 Ti/Ttot が増加するほど、速やかに疲労します。そして、毎回の収縮力の最大収縮力に対する割合が増加するほど、より速やかに疲労するのです。

 Bellemare と Grassino (4)(5)は、この横隔膜筋の呼吸耐力に関する研究を行い、Ti/Ttot、Pdi/PdiMax、TTdi(Tension Time Index)(1)及び横隔膜耐久時間 Tlim の関係を明らかにしました。

TTdi = (Ti/Ttot) × (Pdi/PdiMax)

Ti : 吸気時間
Ttot : 1呼吸サイクルの時間
Pdi : 安静換気時の経横隔膜圧
PdiMax : 最大経横隔膜圧

 Tlim と TTdi との間には以下の関係があることを彼らは示しました。(4) すなわち、TTdi の数値によって横隔膜の周期的収縮運動の耐久時間がわかると述べたのです。

Tlim = 0.1 × (TTdi)-3.6

 しかし、この TTdi を測定するには、胃・食道バルーンカテーテルが必要であり、侵襲的な検査のため、臨床の場で簡易に行うことが出来ません。

 BITI(Breathing Intolerance Index)の特徴は、TTdi を基に呼吸耐力検査を非侵襲的に施行するところにあります。Pdi/PdiMax の代わりに、1回換気量/肺活量 TV/VC を代用したのです。(2)(3)

BITI = (Ti/Ttot) × (TV/VC)

 これは、大きな1回換気量で早い呼吸をすると、呼吸筋が疲労しやすいということです。BITI は TTdi と近似した概念ですが、横隔膜のみの換気予備力だけではなく呼吸筋すべての呼吸耐力(breathing tolerance)を反映すると考えられます。式から明らかなように、実際にはBITI値は呼吸筋の耐久力の逆数として表現され、その一定以上の数値は換気補助の必要を表すものと考えられます。

 BITI測定のための装置(BTA)が開発されています(発明者:古賀 俊彦 特許権者:株式会社古賀医療研究所 特許第4206436号)。Ti/Ttot値とTV値を安静呼吸下で測定し、前述の式を基に自動的に BITI を求めるのです。

 今日、非侵襲的換気補助法、特に NIPPV の普及が進む中、換気補助開始基準の混乱が見られます。専門家の推奨するガイドラインには明確な数値基準は記載が無く、臨床的に総合的に判断し、換気補助法を開始しているのが実状です。
 BITIは、換気予備力ないしは呼吸耐力の新しい有力な指標として期待されています。対象患者および疾患は、呼吸器疾患患者への機械的呼吸補助の開始/終了の客観基準や神経・筋疾患患者などでありますが、今後いろいろな病態の評価に役立つことでしょう。

(1) Esau SA, Bellemare F, Grassino A, Permutt S, Roussos C, Pardy RL. Changes in relaxation rate with diaphragmatic fatigue in humans. J Appl Physiol 54,5:1353-1360,1983.
(2) Burns DM. Ventilatory muscle fatigue and Weaning. 3rd Respiratory Care Seminar Text, The Koga Hospital Medical Research Institute Press, Fukuoka Japan. 185-201,1991.
(3) 古賀俊彦 在宅呼吸療法の開始基準 Clinical Engineering 9,11:987-996.1998.
(4) Bellemare F, Grassino A. Effect of pressure and timing of contraction on human diaphragm fatigue. J Appl Physiol 53,5:1190-1195,1982.
(5) Bellemare F, Grassino A. Force reserve of the diaphragm in patients with chronic obstructive pulmonary disease. J Appl Physiol 55,1:8-15,1983.

BITI にみる患者の代表的症例

症例01 : 健常な若者9人分のデータ
健常者は0.05以下と考えています。非常に若くて健康な人は0.03や0.04という値をとるようです。0.5を超える数値の解釈はこれからの問題です。
6個の TV に関して BITI を求め、その平均値を一点として9人分を表示しています。

症例02 : 患者 79歳女性
肺結核後遺症、右心不全、難治性の両側性胸水、チアノーゼ。マスクNPPVで症状が軽快しています。
6個の TV に関してそれぞれ BITI を求めています。

症例03 : 患者 69歳男性
肺結核後遺症、慢性呼吸不全の急性増悪にて救急入院(在宅酸素療法は受けていなかった)。この時の BITI は0.8を示していました。入院直後からマスクNPPVを開始し、顕著に症状が改善。グラフは数日後に症状が緩和した時期の BITI です。
6個の TV に関してそれぞれ BITI を求めています。

症例04 : 患者 82歳男性
肺気腫による慢性呼吸不全、体動時の息切れ、チアノーゼ。約2週間前から息切れが増強したとのこと。外来受診では、胸鎖乳突筋を使用した呼吸でした。このグラフは来院時の BITI です。
6個の TV に関してそれぞれ BITI を求めています。

症例05 : 患者 82歳男性
肺気腫による慢性呼吸不全(症例04)で、マスクNPPV開始し1週間後の BITI です。呼吸困難もベースラインレベルまで改善。
6個の TV に関してそれぞれ BITI を求めています。

症例06 : 患者3人
症例02・03・04の BITI の平均値をプロット。
6個の TV について BITI を求め、その平均値を一点として3人分を表示しています。

症例07 : 健常者と患者の比較
健常者9人と症例02・03・04の BITI の平均値をプロット。
6個の TV について BITI を求め、その平均値を一点として12人分を表示しています。

Copyright (C) 2018 Koga Institute for Medical Research. All Rights Reserved.